「陰翳礼讃」谷崎潤一郎の作品です。
有名な作品なので今更説明も要らないと思いますが、建築をやっている人間としては非常に為になる一冊です。
日本の家は西洋化が始まって以来、どんどん明るくなってきました。
ガス灯から白熱灯、蛍光灯そしてLEDまで。
その結果、家の中は真っ白けになりました。
最近はLEDでも白熱灯色が多くなったのでだいぶマシになりましたが、30年程前は酷かった。
もちろん、明るい事のメリットは一杯あるのですが問題は明るいところだらけなのです。
はっきり言って落ち着かない。
細かい作業をするところや化粧室は良いのですが、玄関、廊下、トイレまで真っ白けになっている家がいかに多いか!
逆に欧米のホテルや家に行った事のある人は分かると思いますが、家の中は意外と暗いのです。
日本人には暗すぎる感じですが、西洋人は必要なところはスタンドなどで明るくし、あまり家全部を明るくしようという発想がないようです。
夜も煌煌と灯りの付いている日本の家と、全般的に暗い欧米の家のどちらの家が落ち着くかと言えばすぐ分かります。
私は夜の照明だけでなく間取りなどプランニングする際にわざと暗くなる部屋を作るようにしています。
それによって、家の中で長く過ごしていてもメリハリが出来るのです。
明るい部屋で過ごしたい時は明るい場所へ行き、暗くても落ち着いた場所が良いときは其処へ行く。
それだけですが、充分楽しくなったりします。
建築家の伊礼智さんの本を読んでからダウンライトに頼らずにブラケット照明を利用するようになりました。
ダウンライトは部屋内がすっきりするので良いのですが、明るすぎて落ち着かなかったり寝室に取り付けるとベッドに寝た時に光源が直接目に入って非常に不快に感じるのです。
止む無く居室でダウンライトを付ける時は調光器は必須だと思いますが、なるべく使わないようにしたいと思っています。